storyストーリー

天界と人間界の境界線が定かではなく、神と人が交じり合っていた時代。
天女を祖母にもつバラタ王を始祖とするバラタ族。
「マハー=偉大なる」バラタ族の物語がマハーバーラタである。

CHAPTER of LOVE愛の章

バラタ族の王シャーンタヌは水の女神ガンガーとの間に子をもうけた。呪いを解き放つために最初の七人の子が生まれるや川に流したガンガー。八人目を流そうとしたところを怒った王に止められたことから、天界へと帰ってしまう。年月が過ぎてガンガーは成長した子を王に戻すが、その子はビーシュマと名乗り、後に一族の長老として尊敬を集めた。

シャーンタヌ王はガンガーと別れた後、漁師の娘ともうけた息子二人が相次いで王位を継ぎ、そのうちの一人が二人の王妃との間に長男ドリタラーシュトラ、次男パーンドゥをもうける。ドリタラーシュトラは盲目のため王位は次男パーンドゥに。ある日、パーンドゥが森で交尾中の鹿を射止めたが、その正体は鹿に姿を変えていた賢者であった。怒った賢者により、「女性と交わると死ぬ」という呪いをかけられてしまう。

世継ぎを残さねばならないパーンドゥ王は、第一王妃クンティが神々を呼び出すマントラを使えることを思い出し、神との間に世継ぎをもうけるよう依頼。クンティは法の神ダルマ、風の神ヴァーユ、雷神インドラを呼び出し、それぞれユディシュティラ、ビーマ、アルジュナの三人を生む。第二王妃マードリーもアシュヴィン双神との間にナクラとサハーデーヴァの双子をもうけた。これが物語の一方の主人公、パーンドゥ家五兄弟。

クンティは若かりし頃、このマントラを使ったことがあった。そのときに現れた太陽神スーリヤとまぐわい、金の鎧をまとった子を産んだが、父の怒りを恐れて川に流してしまう。が、この子は御者に拾われて育ち、立派な武将へと成長する。これが後に五兄弟の長兄でありながらも対立関係に至った悲劇の英雄カルナである。

パーンドゥは森の中で鹿の交尾を見て欲情し、マードリーと交合。賢者の呪いによって死に至る。マードリーも後を追って死んだため、クンティが五兄弟全員の母となる。

そこで盲目の兄ドリタラーシュトラが王位につく。ドリタラーシュトラには妻ガーンダーリとの間に長男ドゥルヨーダナを筆頭に百人の王子がいた。これがクル家百人兄弟。

両家の兄弟は王宮で共に育てられるが、ことごとく対立。ことにパーンドゥ家の怪力無双ビーマとクル家の長男ドゥルヨーダナはお互いを強く憎み合う。成長し、見目麗しい五兄弟に妬みと恨みを抱くようになったドゥルヨーダナは、あの手この手で蹴落とそうとし、奸計によって宮殿に火をつけ焼き殺そうとするが、五兄弟は長老ビーシュマの警告により脱出。森に身を潜める。

ある日のこと、パンチャーラ国の姫、絶世の美女ドラウパディーの婿選びの祭典が開催された。用意された強弓を見事引き得たのはカルナとアルジュナのみ。しかしドラウパディーはカルナを御者の息子と蔑んだ。そのカルナを召抱えたのがドゥルヨーダナ。アルジュナはドラウパディーを得たが、彼女は兄弟共通の妻となる。

やがてパーンドゥ家の長男ユディシュティラはドリタラーシュトラ王から国土の半分を与えられ、新しい都を作って王となり、世界皇帝の称号を得るまでになった。

これを逆恨みしたドゥルヨーダナ。サイコロ賭博の名人、叔父のシャクニと共にイカサマ賭博を仕掛ける。ユディシュティラは負け続けた。財産、兄弟、妻のドラウパディーまでも騙し取られた。最後の勝負にも負け、十二年間の森への追放、十三年目は身分を隠しての生活を強いられることになった。

森での隠遁生活の間に、ビーマは自らと同じく風神ヴァーユの子、神猿ハヌマーンに遭遇し、ユディシュティラは死神ヤマと問答を交わす。アルジュナはヒマラヤで、自らの父インドラと出会い、シヴァ神より必殺の武器を授けられた。

十三年目、パーンドゥ家は身分を隠し、名前も仕事も変えて、隣のマッツャ国に忍びこんで、その年を乗り切り、都の返還を要求するが、ドゥルヨーダナは拒否。両陣営の対決は避けられなくなりクルクシェートラの地に両陣営の大群が集結する。

CHAPTER of STORM嵐の章

いよいよ大戦が始まろうという時、最高の戦士アルジュナは、突如戦意を喪失する。その御者をつとめていたのが神の化身クリシュナで、彼はアルジュナに戦士の義務を説き、戦意を回復させる。これがヒンドゥー教最高の経典とされる『バガバッドギーター』の場面だ。

大戦は始まり、死闘が続く。クル方最初の総司令官ビーシュマは、戦闘十日目にアルジュナに身体中に矢を突き立てられて倒れる。その後を継いだドローナもクリシュナの奸計により十五日目に死去。次の総司令官カルナは、十七日目にアルジュナの矢に倒れる。パーンドゥ側もアルジュナの最愛の息子アビマンニュ、ビーマの息子ガトートカチャなど有力な武将達が倒れた。

十八日目、総帥ドゥルヨーダナはビーマとの棍棒戦に倒れ、大戦はパーンドゥ方の勝利に終わる。

しかし、ドローナの息子アシュワッターマンが憎しみゆえにパーンドゥ陣営に夜襲をかけた。寝首をかかれたため、クリシュナ、五王子以外は全滅。

悲しみから立ち直ったユディシュティラは、弟たちと共に再び都を統治。百王子たちが全滅した後、五王子に守られて静かに暮らしていたドリタラーシュトラとその妻ガーンダーリも、やがて生きることに疲れ、世を捨てて森へ行く。五王子の母クンティも二人に従ったが、山火事に巻き込まれこの世を去る。

世を儚んだ五兄弟はヒマラヤを目指す。その途中で次々と死んでしまい、バラタ族は消滅に至る。

時をさかのぼること数千年
神と人が住む国で
恨みつらみのなれの果て
誰が先に踏み出すか
今がこの世の境界線…